幻想的な芸術空間「虹の泉」に宿る一人の陶芸家の35年間の生き様

  1. 三重中勢

三重県松阪市飯高町。
三方を山に囲まれ、登山や紅葉等の名所であるその町の一角に、知る人ぞ知る観光スポットがあります。

「虹の泉」と呼ばれるその広大な空間に広がるのは、たくさんのオブジェ。
雲、天使、身をくねらせる人間の像や陶壁。奇抜で一見グロテスクにも見えるその作品たちは見れば見るほど奥深く、生や死・喜び・官能等を訴えかけてくる、ルネサンス期のイタリア芸術のようにも思えます。

陶芸家・東健次

スリランカ

奇抜なオブジェにも驚きますが、それよりもっと驚きなのは、5800平方メートルもの土地にある数えきれないほどの陶芸作品を、東健次という陶芸家がたった一人で作り上げたことです。

24歳でスリランカに旅行した際に構想が浮かんだという東さん。
そこから準備に17年、創作に35年を費やし作られたのが「虹の泉」です。

2020枚の陶板が張り付けられたメイン陶壁、楽器を持つ人の像が立ち並び、今にも音楽が流れてきそうな「ミューズの丘」…。
既に美しく、魂の込められた芸術作品が数多く展示されていますが、これでもまだ未完成なのだそうです。

東夫人の挑戦

虹

35年もの間、ひたすら虹の泉を作り上げることに尽力していた東さんは、2013年、御年78歳で他界。
以降、残された「虹の泉」は東さんの妻・良子さんに託されました。

私は、東健次の妻でありながら、ほとんどアトリエの中へ入ったことはありませんでした。
何故か、それはアトリエは東健次の精神世界であって、
私の様な不純物はたちどころに拒否されてしまうと思っていたからです。

引用:陶芸空間 虹の泉 アトリエの中へ

こう語る良子さんですが、それでも、亡くなる前に頼まれた東さんとの約束を果たすため、周囲の人の手を借りながら、残された13体の彫刻の設置に挑戦しています。

作品を通して、一人の陶芸家の生き様と、それを支える人々の想いが感じられる壮大で幻想的な空間「虹の泉」。
一見の価値があるスポットです。

千春

津市で生まれ育ち、大学進学を機に東京へ。都会での暮らしを満喫するも、津の海が恋しくなり地元に戻って就職する。現在は社労士堀内千春オフィス代表、ロジセンス取締役を兼任。趣味は旅行。海外は14か国、国内では沖縄県以外全県制覇。かわいいもの、おいしいものが大好き。

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