三重県の知られざる天然記念物「法念寺の鉄魚」とは?

  1. 東紀州

三重県尾鷲市にあるJR紀勢本線 三木里駅から歩いて15分ほどの所に、曹洞宗 法念寺があります。

境内を時計回りに歩いていくと、目の前に池が。
36平方メートルという小さな池に、「法念寺の鉄魚」が泳いでいます。
そのルックスは、フナのようで金魚のようでもある感じ。

実は、この鉄魚たち、三重県の天然記念物なのです。

奇跡的に絶滅を免れる

尾鷲市

尾鷲市三木里地区周辺では、戦前、鉄魚(テツギョ)は河川で多く生息していましたが、1944年の東南海地震による津波で絶滅したと考えられていました。

ところが、1956年に、法念寺の池で生息しているのを地元の人が発見し、県が1958年に天然記念物に指定しました。
お寺が高台にあったことが、“奇跡”を呼んだのかもしれません。

鉄魚が“鉄道が大好きな魚”ではないことは分かりました。
では、一体どのような魚なのでしょうか?

鉄魚ってどんなお魚?

本

『図説有用魚類千種 新装版』(田中茂穂・阿部宗明共著、森北出版、2016年)という本に載っている図版を見ますと、

鉄魚は、フナ型のボディーに長い尾びれを持つ、フナに似たお魚

出典:『図説有用魚類千種 新装版』(田中茂穂・阿部宗明共著、森北出版、2016年)

成長するに従って、すべてのひれが伸びていきます。
体色は、朱紅色、青みがかった黒褐色など、さまざま。

日本在来のフナの突然変異種といわれてきましたが、最近のDNA解析では、フナと金魚の交雑種であることが明らかになっています。

また、金魚は飼育種であるのに対し、鉄魚は全くの野生種。野生状態で繁殖し、群れをなして生活をするのが特徴。

鉄魚は、鉄魚として生まれると、その子、孫もみんな鉄魚で、金魚やフナには戻りません。
鉄魚として生きていく宿命が…。
動作は活発で、網でもなかなか捕まえにくいそうです。

鉄魚は、法念寺の池のほか、宮城県や山形県などで数か所しか生息が確認されておらず、希少な魚なんですね。

再び絶滅説がささやかれるも、“池の水ぜんぶ抜く大作戦”で生息確認

寺 住職

法念寺の池では、1958年の天然記念物の指定以来、鉄魚の生息状況に関する本格的な調査が一度も実施されていませんでした。

池は、一面に防護ネットを張って野鳥から魚を保護していたうえに、水が濁り、生息の確認が困難に。
このため、絶滅が危惧されていました。

そこで、法念寺側は調査を依頼。
2012年11月に、尾鷲市職員と檀家(だんか)の皆さんらが、ポンプを使って池の水を全部抜き、底に残った魚を水槽に移して調べました。

その結果、全長5~8センチの70匹の生息を確認。
尾びれが長く、普通のフナとは明らかに姿が違いました。

調査に立ち会った専門家は、驚きを隠せませんでした。
「こんな小さな池で世代交代をして長い期間生き延びていたとは…」

法念寺では、池の鉄魚を地域の宝として大切にするとともに、訪れた方に見てもらいたい、とのことです。ぜひ見てみたいですよね。

ただし、鉄魚を見たい場合は、お寺の方に一言声を掛けてくださいね。
そして、魚を驚かせないよう、境内、特に池の周りでは、くれぐれもお静かに。

【MEMO】
「法念寺の鉄魚」

天然記念物の指定・登録日: 1958年12月15日

所在地:三重県尾鷲市三木里町578(法念寺)
アクセス:JR紀勢本線 三木里駅から徒歩約15分、尾鷲駅からは車で約20分
問い合わせ先:尾鷲市役所教育委員会 生涯学習課生涯学習係
TEL 0597-23-8293 FAX 0597-22-0080

ホームページURL     : http://www.city.owase.lg.jp/contents_detail.php?frmId=13035

村田

ロジセンスのアートディレクター/デザイナー。千葉で生まれ、東京で馬車馬のように働き、結婚を機に伊勢市に移住。家庭を優先しながら好きな仕事を続けている。三重で衝撃をうけたモノは、「とごる」、松阪牛のすきやき、アオサの味噌汁。

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