多度大社に伊勢の忌部氏のルーツが?! 員弁(いなべ)発祥の謎

  1. 三重北勢

上げ馬神事、流鏑馬神事などで知られる多度大社。伊勢神宮と関係が深く、「お伊勢参らばお多度もかけよ、お多度かけねば片参り」と昔から詠われてきました。

多度大社画像

多度大社には、本宮・別宮の2つの社殿があります。
今回は、この別宮にスポットを当て、秘められた歴史浪漫をご紹介します。
それは、員弁(いなべ)発祥に関わること。
旧員弁郡エリア(現在のいなべ市と東員町)は、その字のとおり「員弁」と表記して「いなべ」と呼んでいます。昔からこのエリアで員弁のルーツは、日本書紀に出てくる大工の職人集団、猪名部(いなべ)氏とされていますが、……ひょっとしたら違うルーツがあるのかもしれません。
そのキーワードは「忌部(いんべ)氏」。
忌部氏は古代の朝廷で、中臣氏(藤原氏)とともに祭祀を取り仕切っていたのではないか、と言われています。

員弁(いなべ)の地名由来は、猪名部氏? 忌部氏は違うのか?

いなべ市画像

旧員弁郡エリアの自治体サイト内で出てくる「員弁」のルーツを探りますと、東員町の文化財マップの沿革には「古墳時代は、古代豪族猪名部氏の本拠地であったようで」とあります。
また、いなべ市の第2次いなべ市総合計画書の10ページにも「市名である『いなべ』は、約1,300年前の奈良時代に始まり、当地域には物部氏の支系である猪名部族が居住していたことから、郡名が『猪名部』と名づけられました」とあります。

つまり、どちらも「員弁」のルーツは、猪名部氏である、と公式に謳っている状況。
日本書紀や続日本後紀の作者の伝承など、有力とみられる史書の記述を根拠としているようです。
しかしそれは、100%正しいと言い切れるでしょうか?
猪名部氏も実在したとすると、猪名部氏がここにやってくるよりも先に、忌部氏がいたとは考えられないでしょうか?

忌部(いんべ)氏は麻を使ったシャーマニズムと織物の生産を得意とし、日本各地に広がっていったとされます。忌部氏がいた地域には「麻」という漢字を使った場所があったり、伊部(いんべ)、井辺(いんべ)、伊那部(いなべ)、伊奈(いな)などという地名がついているようです。
そういえば、いなべ市には麻の漢字を使った場所として「麻生田」や「麻生神社」「麻績塚古墳」がありますね。それに、員弁はそのまま音読みすれば「いんべん」で、忌部に近い読み方。
また、麻績塚古墳に埋葬されていたのは「神麻績連」と言われて、これも忌部氏とつながる系譜です。

多度大社の別宮には、伊勢の忌部の祖が祀られている?!

多度大社画像

多度大社の別宮、一目連神社の祭神は、天目一箇命(あめのまひとつのみこと)。多度大社の公式サイトでは「『古語拾遺』によれば、天目一箇神は、筑紫国・伊勢国の忌部氏の祖であり」と明記されています。
古代、伊勢の忌部氏がここにいたとみられ、旧員弁郡を含めたエリアに忌部氏がいた可能性を強く感じさせてくれます。

歴史は、勝者によって語られるもの。
忌部氏と競合の末に力をつけたとされる中臣氏は、のちに藤原氏と姓を変え、朝廷で権勢をふるいました。その勝者、藤原氏が猪名部氏とともに忌部をどんどん東部へと追いやり、史書から排除した可能性がないとは言えないのではないでしょうか?

忌部氏とは

いなべ市画像

平成から令和へと時代が変わる2019年、皇位継承に伴う一世に一度の重要な儀式「大嘗宮の儀」が行われました。皆さん覚えていますか?
この儀式では、「麁服(あらたえ)」という麻の織物が供えられるのですが、古代からこの麁服を作ることができるのは、徳島県にいる忌部氏直系の人のみとなっています。

この忌部氏の一部は、古代に徳島県から東へ移動していき、千葉県までつながります。徳島と千葉、どちらもそれぞれ、アワ(阿波、安房)というのも、忌部氏の東遷でつながっているからだと言われます。
そのルートの途中に、多度大社や旧員弁郡エリア(いなべ市と東員町)があるのも、感慨深いものがありますね。

多度大社の詳細・アクセス

多度大社画像

■場所
〒511-0106 三重県桑名市多度町多度1681番地
■web
多度大社公式サイト
■アクセス
Googleマップ
【車】
東名阪自動車道、桑名東ICから約10分
伊勢湾岸自動車道、湾岸桑名ICから約20分
【徒歩】
養老鉄道、多度駅から約20分

The Inabes

いなべ市を拠点とするクリエイター・デュオ。紙媒体やweb用のカメラ撮影、ライティング、デザイン等を行う。メンバーはunとQ。unは山沿いの三重県内キャンプ場に入りびたるアウトドア派。Qは愛する北勢を舞台にした小説執筆が趣味のインドア派。

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